日本霊長類学会

日本霊長学会功労賞

第40回日本霊長類学会大会(2024年度仙台大会)


 松岡史朗氏

2024年度日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
 伊沢紘生第40回大会大会長から、1名の推薦があり、2023年11月に行われた理事会で審議し、松岡史朗氏(青森県むつ市)に功労賞を贈呈することを決定した。

 受賞理由は以下の通りである。

 松岡氏は、獣医師であり、動物写真家として、北国の豊かな自然に魅せられ、世界最北限のサルの棲む青森県むつ市脇野沢村(下北半島)に在住し、今日まで毎年一年の半分以上の日々、サルの群れと共に山野を歩き、のびやかでしたたかに生きるサルの姿から新しいニホンザル像を求めて撮影に取り組んでいる。下北半島の特定の群れを長期継続調査するとともに、夏と冬の2回、全国から調査員を募集・組織し、むつ市を中心に北限のサルの生息状況に関する広域調査を実施している。また、北限のサルの保護と猿害問題の解決に、長年にわたり継続して尽力し、脇野沢村、むつ市、青森県宮城県などで、さまざまな保護管理組織に、責任者ないし委員として参加している。NPO法人ニホンザルフィールドステーションを立ち上げ、その事務局長として、現在も活躍中である。本会への貢献も極めて大きく、多くの会員に下北半島のニホンザルの基礎的情報を提供してくださったり、宿舎等生活面での世話をされたり、国際霊長類学会大会のエクスカーションで、現地での対応に当たられた。学会の保護委員会(現、保全・福祉委員会)と協働し、下北半島のつけ根にあたる野辺地の市外地に放棄され、北限のサルとの混血が憂慮されたタイワンザル集団の全頭捕獲・駆除に尽力し、成功させたことは、特筆すべき成果である。
 松岡氏の、これまでの下北半島でのニホンザル研究と保全活動への貢献に感謝し、一般社団法人日本霊長類学会功労賞を授与する。

功労賞贈呈式の様子

第39回日本霊長類学会大会(2023年度兵庫大会)


日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
 森光由樹第39回大会大会長、ならびに清野未恵子代議員から2団体の推薦があり、理事会にて審議の上、2023年4月28日、兵庫県香美町(代表:浜上勇人町長)と同県丹波篠山市(代表:酒井隆明市長)に功労賞を贈呈することを決定した。

 受賞理由は以下の通りである。

 兵庫県香美町(代表:浜上勇人町長)

1. 香美町は、農作物に被害を与える里山に生息するニホンザルとの共生を目指して、サル用電気柵「おじろ用心棒」という安価で簡単にできる通電式支柱を開発し、同町において設置を補助し増設している。サル監視員による監視体制を整備するなど捕獲を最小限にしながら管理を進め、孤立個体群で絶滅が危惧されている同町の地域個体群の保全に尽力している。なお、「おじろ用心棒」は同町のみならず同県他市町村、さらには他府県にも普及し成果をあげている。


 兵庫県丹波篠⼭市(代表:酒井隆明市長)

1. 丹波篠山市は、農作物に被害を与える里山に生息するニホンザルとの共生を目指して、サル用電気柵「おじろ用心棒」設置を補助し増設している。サル監視員による監視体制を整備し被害防除に努めている。また捕獲を最小限にしながら地域個体群の保全に尽力している。これらの取り組みの成果は平成29年度に農林水産省から表彰 (鳥獣対策優良活動表彰 農林水産大臣賞 被害防止部門)を受けている。
2. 市町村単位で取り組むサル対策のモデルを確立した。市および地域住民の取り組みについて、霊長類学会員含む研究者や行政からの視察を受け入れている。
3. 大丹波地域サル対策広域協議会という府県をまたいだ広域協議会を作り、牽引している。広域管理は全国で他に類を見ないモデルであり、先進的な取り組みを導入し農作物被害軽減を進めている。
4. 故河合雅雄名誉会員が唱えた理念「丹波の森構想」(人とサル(野生動物)との共生)の実現に向けて構想を牽引している。

 以上のことから、香美町と丹波篠山市のニホンザルの保全と管理は着実に成果をあげる一方で、サルの被害問題を抱える全国の行政機関に情報提供している。

 日本霊長類学会は、この功績を讃えて日本霊長類学会功労賞を香美町と丹波篠山市に贈呈する。


※ 授賞式の模様は こちら をご覧ください。


第34回日本霊長類学会大会(2018年度東京大会)


 和歌山県(代表 仁坂吉伸知事)

2018年度日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
 評議員から1団体の推薦があり、2017年6月3日に行われた2018年度第1回理事会における審査により、和歌山県(代表:仁坂吉伸知事)に功労賞を贈呈することを決定した。

 受賞理由は以下の通りである。

 和歌山県では、和歌山市と海南市にまたがる大池地域に飼育されていたタイワンザルが野生化し、群内でニホンザルと交雑していることが1990年代に確認された。この問題は社会の注目を集め、国内の外来種問題の話題でも、交雑による生物多様性や生態系への影響の代表例とみなされるようになった。和歌山県は1999年から調査を開始し、2005年に国が外来生物法を施行する以前の2002年から、県独自に保護管理計画を策定し、その中で外来種根絶を目標とする政策を実施した。以来、長期にわたり大池地域で捕獲やモニタリング事業を継続し、外来種とその交雑個体を根気強く排除した。2017年12月には、過去5年間に新規個体が確認できないことから、大池地域から群れが消滅したと判断し、根絶を発表した。この成功事例が残せたことは、適切に判断し事業を続けた和歌山県の努力の成果である。また、同様の問題を抱える国内外の関係者に励みを与える成果といえる。日本霊長類学会はこの功績を讃えて、日本霊長類学会功労賞を和歌山県に贈呈する。

功労賞贈呈式の様子

第32回日本霊長類学会大会(2016年度鹿児島大会)


 柴鐵生氏
 山口直嗣氏
 冠地富士夫氏

2016年度日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
 仲谷英夫第32回大会大会長から3名の推薦があり、2016年2月20日に行われた2015年度第3回理事会における審査により、冠地富士男氏(宮崎県日南市)、柴鐵生氏(鹿児島県屋久島町)、山口直嗣氏(宮崎県串間市)に功労賞を贈呈することを決定した。

 3氏の受賞理由は以下の通りである。

柴鐵生氏
 40年以上に及ぶ屋久島でのニホンザル研究は、数え切れないほどのたくさんの地元の方の、有形無形の支えで続けることができた。その中でも、柴鐵生氏は、もっとも古くからお付き合いをし、とくに大きな貢献をされた方である。柴氏は、屋久島で大規模な伐採が進行中であった1970年代、原生林を守る運動の中心として活躍され、瀬切川右岸の国有林の伐採計画を撤回させるという、大きな成果を上げることができた。これによって、屋久島西部の、海岸から山頂まで連続する植生の垂直分布が守られ、のちに屋久島の普遍的価値が認められて世界自然遺産登録につながった。このような、われわれの調査地そのものを守る活動だけでなく、調査基地のある永田集落の住民として、1974年の最初の一斉調査で、半山川の人家跡でキャンプする研究者たちに車を貸してくださったことから始まり、毎晩のように碁をうち焼酎瓶片手に議論を交わし、初期の若き研究者たちの兄貴的存在であった。柴氏の、これまでの屋久島のニホンザル研究への貢献に感謝し、日本霊長類学会功労賞を贈呈する。

山口直嗣氏
冠地富士男氏
 山口直嗣氏ならびに冠地富士男氏は、京都大学の技官、技術職員として、長年にわたり、幸島のニホンザルの長期継続調査を担い、幸島での研究活動を支えてこられた方である。調査や実習で、ニホンザル1頭1頭について、名前はもちろんのこと、その性格や家系、様々なエピソードなどを教わった学会員も数多い。両氏の長年の努力のおかげで、幸島のニホンザルは、世界で最も長く調査されている霊長類の群れとして今も存続し、貴重な研究や教育の対象となっている。さらに、このような研究活動への直接のサポートのみならず、離れた島に滞在中の研究者に、その日の釣果や焼酎を船で届けてくださったり、晩御飯を御馳走してくださったりなど、陰に陽に幸島で調査をする学生や研究者を支えてくださった。両氏の霊長類の保全ならびに研究への貢献に敬意を表し、日本霊長類学会功労賞を贈呈する。

第17回日本霊長類学会大会(2001年度京都大会)


 浅葉信夫氏

受賞理由:長年にわたる嵐山のニホンザル研究に貢献し、日本の霊長類学の発展につくされた

第15回日本霊長類学会大会(1999年度宮崎大会)


 三戸サツエ氏

受賞理由:長年にわたる幸島のニホンザル研究に貢献し、日本の霊長類学の発展につくされた
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