日本霊長類学会

【報告】令和6年度 自然史学会連合講演会ブース出展(2024/11/10開催)


2024 年 11 月 10 日(日)に令和 6 年度自然史学会連合講演会「深くて長い静岡の自然史」がふじのくに地球環境史ミュージアムにて開催され、日本霊長類学会の体験教室を静岡大学の栗原洋介が担当しました。今回は「野生のサルの調べ方を体験してみよう」をテーマにして、直接観察と自動撮影カメラに関連する展示を行いました。

直接観察に関連する内容としては、霊長類研究でよく用いられる手法である個体識別を疑似体験することをねらいとした、絵合わせゲームを準備しました。
自身で撮影したニホンザルの写真を用いて、表にサルの顔写真、裏には個体名と簡単な個体情報を掲載したカードを作成しました(全部で 20 個体分 40 枚)。プレイヤーは同一個体だとおもう 2 枚を選びカードをめくって答え合わせをするというルールで、10 組または 20 組のペアリングに挑戦してもらいました。取り組む前には必ずと言ってよいほど「すべて同じ顔に見える」「まったくわかる気がしない」という声が聞かれたが、多くの方がじっくりサルの顔を見ることを通して、いろいろな顔のサルがいることに気づき、さらに私が各個体に関するエピソードを補足することで、サルの行動や発達、その個体差などに興味を持ってくださったようでした。
当初想定していたよりも、多くの方が熱心に取り組んでくださり、また親子など複数人でわいわい遊んでいただくこともできました。みなさんがゲームで遊んでいる様子を見ていると、大人よりもお子さんの成績がよい傾向にあったこと、大人でもサルの顔を見分けるのが非常に得意な方がいらっしゃったことはスタッフ側としても興味深い発見でした。全体として、今回準備した絵合わせゲームは、楽しみながら霊長類の研究手法を疑似体験してもらうよい仕組みだと実感しました。



自動撮影カメラ調査に関する内容としては、屋久島で撮影されたニホンザル・ニホンジカの映像と、静岡大学の演習林(浜松市・川根本町)で撮影された哺乳類の映像を展示しました。また、ふだん調査に使っているカメラの実物(実際に稼働するもの、故障したので分解して内部の構造がわかるようなもの)を準備し、カメラの構造や機能、フィールドでの使い方などについて解説しました。
今回は霊長類学会のブースでしたが、どちらかと言うとさまざまな哺乳類の映像をよく見ていた方が多かったようにおもいます。やはり地元で撮影された動画であることが興味をひいたのと、近くに哺乳類の剥製が置いてある展示室があったことと関連するかもしれません。また、カメラ自体に興味をもったお子さんもいらっしゃったため、実際にカメラを動かしたり、内部の構造がわかるような実物に触れてもらったりしながらお話しすることができたのはよかったと思います。




体験教室が開催された 10 時から 16 時過ぎまでの 6 時間で、17 組 32 名の方がブースを訪れてくださいました。講演会全体の規模を踏まえると、それなりの数の来館者がブースに足を運んでくださったようにおもいます。1 人で担当したため、ときどき手が回らず、十分に解説できないままブースを立ち去ってしまった方もいたのが悔やまれますが、ニホンザルの絵合わせゲームを中心に多くの方に展示を楽しんでもらえたのではないかと考えています。

最後に、このような貴重な機会を与えてくださった自然史学会連合のみなさま、日本霊長類学会の理事会のみなさまに感謝申し上げます。


ブース全体の様子
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