公開シンポジウム

(第33回日本霊長類学会大会公開シンポジウム/第12回人類学関連学会協議会合同シンポジウム)

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【入場無料・申込不要】

「人、自然、テクノロジーの共生に向けて:人類学の挑戦」

日時 2017年7月17日(月・祝日) 13:00 ― 16:00

場所 コラッセふくしま(福島県福島市:JR福島駅西口から徒歩3分)

世界の各地で、人種、民族、国家、言語、宗教、さらには、性、世代・年齢、富、学歴などの違いから様々な軋轢(コンフリクト)が生じています。このような人と人の間の軋轢だけでなく、大規模災害のように自然の脅威が人の生活を危機に陥れたり、逆に、人が自然を破壊に導いたりすることもあります。自然の一部である野生動物と人の間にもさまざまな軋轢が生じています。さらに、人が創り出してきた現代のテクノロジーは、人々の暮らしに深く入り込んでいますが、人の暮らしと調和しているものばかりではなさそうです。

さまざまな軋轢を乗り越えるために、人と人が、人と自然が、さらには、人と新たなテクノロジーが、共生するために模索してきた過去を、あるいは模索している現代を、今、福島の地で語り合うことは、とても意味のあることだと思います。

さまざまな領域で活躍している方々に「共生」を視野に話題提供していただき、皆さんと一緒に考えたいと思います。ご来場をお待ちしております(入場無料、申込不要です)。

■プログラム

「長期進化からみたヒトの特徴について」

諏訪 元(東京大学・総合研究博物館・教授/日本人類学会)

「テクノアダブタビリティ」

岩永 光一(千葉大学大学院工学研究科・教授/日本生理人類学会)

「環境変動の時代の文化人類学と科学技術」

森田 敦郎(大阪大学大学院人間科学研究科・准教授/日本文化人類学会)

「被災地の復興と生活文化をめぐる軋轢-宮城県・牡鹿半島における文化創造と安全-」

加藤 幸治(東北学院大学文学部・教授/日本民俗学会)

「サルから見た天災と人災-東日本大震災を例に-」

伊沢 紘生(宮城教育大学名誉教授・宮城のサル調査会会長/日本霊長類学会)

 

■講演内容

講演1(諏訪):講演者本人がアフリカで発見した約400万年前に生存していたラミダス猿人から現生人類までの人類進化史を概観しながら、人類の攻撃性と協力性の進化について、話題提供する。

講演2(岩永):科学技術は人間の幸福や繁栄をもたらす一方で、基本的な人間特性と調和しない技術は人間のストレスとなる。テクノロジー(技術)とアダプタビリティ(適応能力)をつなぎ合わせたテクノアダプタビリティをキーワードに、技術とヒトの関係性を整理し解説する。

講演3(森田):地球温暖化に代表されるグローバルな環境の変化は、人間活動によって引き起こされている。このように地球全体の環境が人間活動によって形成されるという事実は、自然と文化、自然科学と社会科学の関係を大きく書き換えつつある。この講演では、変化する地球環境の中で生じつつある文化人類学と科学技術の新しい関係について考える。

講演4(加藤):東日本大震災の被災地に暮らす人々は、新しい道や建物が建ち始めても、以前の地域像とは乖離したものになっていくことに戸惑い、過去のくらしとの地続き感への希求は切実である。被災地に暮らす人々の環境や自然、歴史、テクノロジーへの理解と葛藤を紹介しながら、文化における「より良い復興」について考える。

講演5(伊沢):アフリカでチンパンジーを、南米でオマキザルなどを、日本ではニホンザルを、その地域に生きる人々と共に見てきた講演者本人の経験から紡ぎ出される人と野生動物の関係を、特に、「サルから見た東日本大震災」という視点で語る。

司会:中道正之(大阪大学大学院人間科学研究科・教授/日本霊長類学会)