日本霊長学会功労賞
第34回日本霊長類学会大会(2018年度東京大会)
和歌山県(代表 仁坂吉伸知事)
■2018年度日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
評議員から1団体の推薦があり、2017年6月3日に行われた2018年度第1回理事会における審査により、和歌山県(代表:仁坂吉伸知事)に功労賞を贈呈することを決定した。
受賞理由は以下の通りである。
和歌山県では、和歌山市と海南市にまたがる大池地域に飼育されていたタイワンザルが野生化し、群内でニホンザルと交雑していることが1990年代に確認された。この問題は社会の注目を集め、国内の外来種問題の話題でも、交雑による生物多様性や生態系への影響の代表例とみなされるようになった。和歌山県は1999年から調査を開始し、2005年に国が外来生物法を施行する以前の2002年から、県独自に保護管理計画を策定し、その中で外来種根絶を目標とする政策を実施した。以来、長期にわたり大池地域で捕獲やモニタリング事業を継続し、外来種とその交雑個体を根気強く排除した。2017年12月には、過去5年間に新規個体が確認できないことから、大池地域から群れが消滅したと判断し、根絶を発表した。この成功事例が残せたことは、適切に判断し事業を続けた和歌山県の努力の成果である。また、同様の問題を抱える国内外の関係者に励みを与える成果といえる。日本霊長類学会はこの功績を讃えて、日本霊長類学会功労賞を和歌山県に贈呈する。
功労賞贈呈式の様子
第32回日本霊長類学会大会(2016年度鹿児島大会)
柴鐵生氏
山口直嗣氏
冠地富士夫氏
■2016年度日本霊長類学会功労賞受賞者の決定と理由について
仲谷英夫第32回大会大会長から3名の推薦があり、2016年2月20日に行われた2015年度第3回理事会における審査により、冠地富士男氏(宮崎県日南市)、柴鐵生氏(鹿児島県屋久島町)、山口直嗣氏(宮崎県串間市)に功労賞を贈呈することを決定した。
3氏の受賞理由は以下の通りである。
柴鐵生氏
40年以上に及ぶ屋久島でのニホンザル研究は、数え切れないほどのたくさんの地元の方の、有形無形の支えで続けることができた。その中でも、柴鐵生氏は、もっとも古くからお付き合いをし、とくに大きな貢献をされた方である。柴氏は、屋久島で大規模な伐採が進行中であった1970年代、原生林を守る運動の中心として活躍され、瀬切川右岸の国有林の伐採計画を撤回させるという、大きな成果を上げることができた。これによって、屋久島西部の、海岸から山頂まで連続する植生の垂直分布が守られ、のちに屋久島の普遍的価値が認められて世界自然遺産登録につながった。このような、われわれの調査地そのものを守る活動だけでなく、調査基地のある永田集落の住民として、1974年の最初の一斉調査で、半山川の人家跡でキャンプする研究者たちに車を貸してくださったことから始まり、毎晩のように碁をうち焼酎瓶片手に議論を交わし、初期の若き研究者たちの兄貴的存在であった。柴氏の、これまでの屋久島のニホンザル研究への貢献に感謝し、日本霊長類学会功労賞を贈呈する。
山口直嗣氏
冠地富士男氏
山口直嗣氏ならびに冠地富士男氏は、京都大学の技官、技術職員として、長年にわたり、幸島のニホンザルの長期継続調査を担い、幸島での研究活動を支えてこられた方である。調査や実習で、ニホンザル1頭1頭について、名前はもちろんのこと、その性格や家系、様々なエピソードなどを教わった学会員も数多い。両氏の長年の努力のおかげで、幸島のニホンザルは、世界で最も長く調査されている霊長類の群れとして今も存続し、貴重な研究や教育の対象となっている。さらに、このような研究活動への直接のサポートのみならず、離れた島に滞在中の研究者に、その日の釣果や焼酎を船で届けてくださったり、晩御飯を御馳走してくださったりなど、陰に陽に幸島で調査をする学生や研究者を支えてくださった。両氏の霊長類の保全ならびに研究への貢献に敬意を表し、日本霊長類学会功労賞を贈呈する。
第17回日本霊長類学会大会(2001年度京都大会)
浅葉信夫氏
■受賞理由:長年にわたる嵐山のニホンザル研究に貢献し、日本の霊長類学の発展につくされた
第15回日本霊長類学会大会(1999年度宮崎大会)
三戸サツエ氏
■受賞理由:長年にわたる幸島のニホンザル研究に貢献し、日本の霊長類学の発展につくされた