昨年の第27回大会の開催通知では,長谷川寿一大会会長以下実行委員会のメンバーによる3・11のお見舞いが冒頭に述べられていました。今回もまず,3・11への持続的支援を会員の皆様に呼びかけたいと存じます。復興は長期間におよぶと予測され,どのような形であれ,持続的でねばり強い支援が必要だと感じているからです。
さて今回の大会は,名古屋の椙山女学園大学で開催される運びとなりました。椙山女学園は創立107周年を数え,幼稚園から大学院まで含む名古屋の老舗の総合学園です。大学は近年2学部を新設し,7学部(女子大学では日本一の学部数)を擁する総合大学となっています。学園の建学理念は,創設者の言葉である〈人間になろう〉であり,創立100周年の記念事業として,椙山女学園人間学研究センターも設置されております。〈人間になる〉という言葉は,〈ホミニゼーション〉ともオーバーラップしますし,霊長類学の各分野で人間の特性を追究するときのキーワードとして使える言葉だと思います。渡邉大会会長が主任研究員を務めている人間学研究センターでは,目下総合人間学を模索中ですが,このようなタイミングで日本霊長類学会大会が椙山女学園大学で開催されるのは,まさに時宜を得たものと考えております。
今回の公開シンポジウムは,これまで霊長類学が探求してきた「人間性の由来」について見つめ直し,現時点でどれほど迫れるのかという問題意識のもとに企画いたしました。シンポジウムでの議論を通して,総合的に人間を捉え直したいと考えており,このような観点から,人間学研究センターにはこのシンポジウムの後援をお願いいたしました。人間学という表現も少しづつ定着してきたように思いますし,その重要な一角を霊長類学が占めていると確信しております。そして若い研究者たちの受け皿として,人間学・総合人間学の発展を期待しているところです。このシンポジウムをはじめとして,会員の皆様の日頃の研究成果の発表を通して,今一度,「人間性」について考え直す機会が提供できればと考えております。多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。