学会活動

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2005年1月12日

和歌山県知事
木村 良樹 殿
日本霊長類学会
会長  西田 利貞

ニホンザルとタイワンザルの交雑化防止に関する要望

 和歌山県で野生化したタイワンザルによるニホンザルとの交雑問題は外来種による遺伝子攪乱として全国的に注目されております。貴県は、この問題に対して「特定鳥獣保護管理計画」を実施されることにより適切に対応されてきました。現在までに、タイワンザルと交雑個体(以下、交雑集団)の大半が捕獲除去され、計画は順調に成果を挙げてきていると考えられます。私ども日本霊長類学会も、生息状況や交雑状況の調査をおこない事業に協力してまいりました。その結果、一時は300頭に達すると危惧された交雑集団は、現在50〜80頭程度に縮小しています。しかしながら、交雑集団の増加率はきわめて高く年間14%にも達することから、今後も引き続き捕獲を実施する必要があります。

 最近いただいた通知により、今年度で「特定鳥獣保護管理計画」を終了する方針と承りました。この時点で事業を終了すれば、交雑集団は高い増加率のもとに5年後には150頭、10年後には300頭、15年後には600頭に増殖し、除去計画そのものが水泡に帰すことになります。またその間には多数の交雑個体が貴県だけでなく紀伊半島全域に拡大することも予測されます。

 「特定鳥獣保護管理計画」がを終了する場合、有害鳥獣捕獲による排除を代替策とする考えがあるかもしれません。ただし農作物被害に基づく通常の有害鳥獣捕獲では、サルの個体数が増加し被害が出て初めて捕獲申請がなされるため、対策が後手に回ることになります。また、純粋のニホンザルまでが捕獲除去の対象になる危険性があり、ニホンザル保護の趣旨に反することにもなります。有害鳥獣捕獲の場合は、必ず「生態系に係る被害等の防止及び軽減を図る」目的で県自らが実施すべきでしょう。

 しかしながら、これまでの成果を考えると、現在の事業を継続することがもっとも効率的かつ有効な手段であることは明白です。完全排除への希望がある今こそ事業を強化すべきときであり、ここで不適切な判断をすると将来に大きな禍根を残すと確信します。折りしも、国は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」を制定し、在来生物種の存続を脅かす交雑被害を防除防止する姿勢を強く打ち出しています。貴県が全国の範たる事業にいち早く着手されていることに敬意を表すとともに、これまでの努力が無に帰すことがなきよう、以下の要望をいたします。なお、日本霊長類学会は、今後も交雑タイワンザル問題の解決にむけ協力を惜しまぬことを表明いたします。


要望

 交雑タイワンザルの全頭排除を実現するため、「特定鳥獣保護管理計画」による捕獲除去事業の延長を要望します。また万一この延長が不可能な場合、排除に真に有効な代替手段を講じて、今以上に捕獲除去に力を入れていただくよう要望します。


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