日本霊長類学会へのお誘い

日本霊長類学会は、わが国の霊長類学の発展をふまえて、霊長類に関する学術の進歩とその知識の普及をはかること、多くの分野にまたがる霊長類研究者の連携を深め、資料・情報や意見を交換しあうための場を提供することを目的として、1985年に設立されました。

“サル学”と称されるわが国の霊長類研究は、終戦直後に、九州の幸島、高崎山などにおける野生ニホンザルの観察からはじまりました。そして1950年以降、多くの成果をあげ、世界の霊長類研究をリードしてきました。現在では霊長類学の興味・関心もそれに基づいた研究方法も多様になっています。フィールドでサルの行動を観察する動物行動学的研究から、生態学、社会学、行動観察や実験でサルやヒトの意識、記憶、認知、コミュニケーション等を調べる比較認知科学、骨や筋肉、ロコモーション、さらに化石などを調べ、サルやヒトの進化について考える形態・系統学、遺伝子や分子レベルでの解析を行う分子生理学あるいは集団遺伝学、脳や神経の働きを探求する脳生理学、そして生殖生理や実験動物学など、さまざまな角度からの研究が試みられるようになりました。このように、今日の霊長類学では、遺伝子から個体、さらには社会構造のレベルにおよぶあらゆる角度からの総合的、学際的な研究がおこなわれています。そしてこれまで幾多の成果を生み出し、世界中の霊長類学、ヒトやその進化の理解に多大な貢献をしてきました。

現在、本学会の正会員数は約480人です。設立以来、毎年学術大会を日本各地で開催し、2015年7月に開催された学術大会は31回目の大会となりました。どの学術大会でも、様々な専門分野を踏まえつつ、その領域を超えた対話や討論・交流が活発に行われてきました。さらに、機関紙『霊長類研究』や準機関誌”Primates“を刊行して、霊長類学の成果を内外に広く公表しています。本学会はまた、霊長類学の今後を担う若い研究者を対象に、高島賞国際学術研究助成ならびに研究奨励基金を設けるなど、学術活動の推進をはかっています。 また、本学会は国際霊長類学会(International Primatological Society: IPS)と協力関係をむすび、1990年には名古屋と京都で、また2010年には京都を会場にして国際霊長類学会学術大会を主催し、学会の国際的ネットワークを大きく広げるよう努めております。さらに1996~2000年および2008年から現在まで3人の日本人がIPS会長を務めており、この事実は、日本の霊長類学が国際的にも高く評価されている証左であります。

本学会はまた、霊長類をとりまく社会的状況にも深い関心を持ち、積極的に取り組んでいます。今日、霊長類は実験動物としての有用性を高く評価されていますが、その一方で、野生状態では多くの種が絶滅の危機にさらされています。本学会内には保全・福祉委員会が組織され、最適な保全策を検討するとともに、動物飼育・実験における倫理の確立と実験動物の適切な供給のために努力してきました。ニホンザルをはじめ各種霊長類の保護、とりわけヒトと自然の共存といった問題については、研究者だけではなく、行政や民間団体をも交えて討議をかさね、社会に対しても積極的に発言しています。また、保全・福祉活動助成を設け、会員による保全や動物福祉に関する活動の支援を行なっています。さらに、多くの日本人研究者がIPSからIUCNの霊長類スペシャリストとして選出され、研究活動を通じて自然保護を推進する活動をおこなっています。

本学会は今後も、これらの国際的な学術活動や自然保護活動の推進、実験倫理の普及を期していく所存です。

世界の霊長類の未来を展望しつつ、霊長類学の発展をともに担い、学術的・社会的に貢献いただくため、霊長類に関心をお持ちの方は、ぜひ本学会にご入会頂きたく、ここにお誘い申しあげます。入会は、入会方法のページをご覧ください。

日本霊長類学会会長
中道正之