日本霊長類学会設立の趣旨

(HP掲載にあたり、一部改変)

若葉の候となりました.皆様には御清祥のことと存じます.さて,私たちはこのたび日本霊長類学会の設立をめざし,このお手紙を差し上げる次第です.
御承知のとおり,我が国における霊長類研究は1950年代以降着実に進展し,その研究体制も整ってきました.日本モンキーセンターはプリマーテス研究会を毎年開催し,国際的な専門誌「PRIMATES」も四半世紀の歴史を誇り,高い評価を受けています.また京都大学霊長類研究所は,共同利用研究を推進するとともにさまざまな研究会を開いて研究者の交流を図っています.
しかしながら,霊長類の研究者が,人類学,生態学,形態学,心理学,医学,生理学,生化学,実験動物学その他多数の分野の学会に分散している現状では,研究対象である霊長類とその現状をより良く知り,多分野の研究を理解し,資料や情報を交換し合う組織的な場がありません.それぞれの分野に業績のある研究者はもとより,これから育ってゆく若い研究者に広い視野に立った研究を進めてもらうためにも学会組織が必要です.
類人猿も含めたサル類を材料として扱い,個体レベル以下の研究を進める研究者と,個体レベル以上,とくに集団レベルの研究を進める研究者との間の十分な意思疎通の場が欠けている現状はご承知の通りです.一方では実験動物の供給,他方ではニホンザルをはじめとする霊長類の保護の問題に研究者同士が意見を交換し意志を通じ合う中から,社会に向かって発言してゆくことも急務だと思われます.
将来は科学者集団としての学術会議にも霊長類研究者の意見を反映させ,学問領域としての認知を各界に訴えてゆくことも考えねばなりません.霊長類学会は,このような活動を実践し,組織化するための足場になるでしょう.
国際的にみれば国際霊長類学会(IPS)の日本人登録者数は米国につぐ多数となっているにもかかわらずその運営はほとんど他国の研究者の努力に任されています.このような現状から,日本の霊長類研究者による組織的寄与が望まれています.現在あるJAIPSは有志が自主的に始めたIPS会費徴収の臨時組織であって,一日も早い学会設立を望んでいます.日本モンキーセンターもまた霊長類学会の設立に賛成し,協力を表明しています.
以上のような事情から,日本霊長類学会設立に向けて有志が語らい合い設立発起人会をつくりました.つきましては,本会設立の趣旨に賛同の上,御入会くださいますようお誘い申し上げます.

1985年5月10日
日本霊長類学会設立発起人会